其之四 海ウンチ

 砂底を潜っていると、オブジェのようにそこかしこにある「海ウンチ」。かつてビギナーダイバーに、「ほら、うみうんちです」と指差しつつ海中でボードに書いたところ、その方はその後ずーっと「ウミウンチ」という生き物であると思い込んでいた、ということがあった。
 いうまでもなく海ウンチとはクロワッサンでのみ通じる愛称なので、他所で誇らしげに「海ウンチを見た!」と語らないようご注意を
()

 ところでこの通称海ウンチ、いったいなんなのだろうか。
 時間が経って崩れてしまっているもの、半ば崩壊しているものなどあるいっぽう、今まさに形成中というものもある。じっくり観察してみると、中央部分から次々に新しいウンチがニョニョニョニョニョと出てくることに気づく。

 これは、本当にウンチなのだ。けっして生き物そのものではない。
 ではこの海ウンチを出している生き物とは?
 ギボシムシである。
 ギボシとはもちろん擬宝珠のこと。擬宝珠ってなんのことかわからない?では広辞苑で調べてください。
 広辞苑で調べてみると、驚いたことにギボシムシの説明まで載っている!!

 いったいぜんたいギボシムシとはどんな姿をした生き物なのか。
 得体の知れない、それも1mにも達するという変てこ生き物を、掘り出してまで探そうという気にはなかなかなれず、我々の間では長い間見たことのない生き物という存在だった。ところが、あるときゲストを案内中に、どういうわけか砂上にポツンとたたずんでいるギボシムシを見つけてしまった。
 こんな生き物、見て喜ぶのはよほどの変態的マニアだけだろう。ギリギリのところでそれに該当してしまう僕は、すかさずゲストに是非撮ってとお願いしてしまった。その写真がこれである。

撮影者である奈良のザリガニハンターさんのコメント
『この写真を撮ったのは私がカメラを購入して初めての水納島でした。
ゲージュツ写真を夢見ていた私にむかって
「これ、珍しいから撮っておいて」
・・・植田さん、こんなミミズの親玉の写真撮るの!?
と思ったのはいうまでもありません。』

 写真の個体はせいぜい50センチほどだったけど、この生き物こそが海ウンチの生みの親。こんなコーナーなどなかったらけっして日の目を見ない生き物であることだけはたしかだろう。その姿を見ることができたみなさんはシアワセ者である。みんなでザリガニハンターさんに感謝しよう!!