
スキー2日目
翌22日も朝から雪だった。
ボリボリという不思議な名前のきのこが入った味噌汁を味わっていた朝食の間、雪は止んでは降り、降っては止みを繰り返していた。今日もまた昨日のような吹雪なのかなぁ……
昨日1日ですでに「勝手」がわかったので、準備をするにも何をするにも我々の足どりは軽い………はずだったのだが、オタマサはしっかり筋肉痛になっていた。年末にスキーに行った水納小中学校の先生も筋肉痛になった、と言っていたのだけれど、なんでスキーでそんなところが筋肉痛になるのかな?と思っていたオタマサは、このときその理由を知った。スキー靴で歩くからである。
それにしても、スキーで筋肉痛になるなんて。フフフフフ。貴公子はまったく平気だ。
約1名筋肉痛ではあったものの、部屋にかけてあるウェアを着る時も、スキー乾燥室に置いてあるスキー靴を履く際も、もはやどこから見ても申し分のないスキーヤーだった(本人談)。
この日も9時にスキー場へ。
朝の雪は断続的に続いているが、空の色は昨日に比べれば随分明るい。
今日は最初からリフトに乗って行くことにしていたので、ゴンドラ山麓駅のリフト券売り場に直行してもらい、そこで2日券を購入した。
明日の4時まで、ニセコアンヌプリ国際スキー場のリフトからゴンドラから乗り放題、おまけに本日のナイターまで出来ちゃうというお得券である。
といっても、それはストロングスキーヤーにとっての話。我々の思考は逆だった。
1日何回乗れば元をとったことになるのか?
昨日のように8時間券を買って2回しか利用しなかった、なんていうのはもったいない。2日券の値段分を単発で買うと何回乗れるのか。
8回分だった。
そうか、1日4回乗ればいいわけだな………。
なんというネガティブスキーヤー!!
というわけで本日1回目。昼になっても修学旅行を除けばそれほど人がいるわけではないが、午前中の、まだ修学旅行生が集まり始める前の時間は貸切といってもいいほどに空いていた。
すでにトータル3回目。足取りも軽くゲートを越え………ているかと思えば、リフトに乗るときも降りるときもまだ緊張しているオタマサであった。
リフトに乗っている間、昨日に比べればまったく風がないことを確信した。雪もそれほど激しくない。風で巻き上げられる地吹雪さえなかったら、視界はそれほど奪われることもない。
リフトから降りてすぐのところで驚いた。
雪がフワフワなのである!!
コースから外れているわけでもないのに、スキー板がフワフワの雪に埋もれていた。
これがいわゆる「新雪」ってやつ?
いやあ、我々ごときがこんなの味わっていいのかなァ………。
でもこの感触は気持ちいい!。
本来、ゲレンデは圧雪車によって整えられているもので、この日もちゃんと出動しているのだけれど、今日は朝からずっと雪が降っているから間に合ってないようだった。
ときおり日差しも出るようになったのでゲレンデは明るい。視界良好だとコースが見えて気持ちいい。昨日は小刻みに小休止しながらだったけど、今回はコースの半ばくらいのところで落ち合うだけにとどめた。
まるで貸し切りのようなゲレンデを鮮やかに滑る貴公子とミジンコ。ミジンコだったけど、この日2度、3度とリフトに乗るうちに、いつしかオタマサはボーゲンの女王になりつつあった。
この日は雪の合間にときおり日差しが出るほどのいい天気だったので、ゲレンデでゴーグルをはずすとまぶしくてしょうがない。放っておくと「雪目」というものになるのだそうだ。
かといって売店で買った曇り止めも、熱気をほとばしらせて滑る貴公子の前では役に立たなかった。仕方なく、まさかスキー場でつけることになるとは思ってもいなかったサングラスを装着した。
なんか、「できるヤツ……」って感じ。
我々は他のスキー客に比べて色が黒い。もちろんスキー焼けとはまた異質な日焼けなのだが、パッと見だとなんとなくそれっぽいのだ。おまけにオタマサは日焼けで髪が半茶パツだし、わりとウェアもサマになっている。姿だけを見るとさらに「できるヤツ……」だ。
が。
滑る彼女はスーパーボーゲンなのだった。
午前中は、なんだかんだと調子に乗って4回もリフトに乗ってしまった。すでにノルマ達成だ。
ノルマ達成と同時に、昨日抱いていた不安や緊張もなくなってしまった。
なんだ、俺らってキチンとスキーしてるじゃん!!
根が単純なだけに、そういう余裕が出るとすぐに食に出てしまう。この日の昼飯はラーメン屋にしたのだが、しっかりサッポロ生ビールを注文していた。けっしてスキーをなめているわけじゃないんだよ……。
一滑りしたあとに(なんてナマイキな表現!!)暖かい室内でゲレンデを見ながら飲む生ビールは格別である。
ノルマは達成したし、楽しく滑れたし。なんか、もう今日はこのままここで飲んだくれててもいいなぁ……って感じ。
だが、手招きする生ビールサーバーに別れを告げ、果敢にロッジを後にした。
………といっても、即座にスキーをするわけではなかった。
第1回雪埋まり大会ぃぃぃ〜!!
(パフパフッ) え?何をするのって?
いや、その特になんてことはないんですけどね……ただ単にフカフカの雪に寝転ぼうと………。
ふんわりと積もった雪に、全身で倒れこむのである。
スキー場での「うちの奥さんの夢ベスト3」のうちのひとつがこれである。
夢を叶えてもらうため、思いきり背中を押してやった。
夢のひとつが叶えられて満足したうちの奥さんは、引き続きもうひとつの夢の実現に移った。
第1回雪だるま作り大会ぃぃぃぃ〜!!
(パフパフッ)文字通り雪だるまを作るのである。これも、うちの奥さんのスキー場での夢ベスト3のひとつなのだ。
あらかじめ雪をある程度固めておいて、それからだるま状に整形していくのだ。なるほど、たしかにだんだん雪だるまらしくなっていった。
目と鼻をつけて完成!!
ゲレンデの傍らではあったが、ジャンプをするためにわざとコースを外れてくるボーダーがときおりすぐそばを通過するなかで、1体の雪だるまがまるで禅僧のようにたたずんでいた。
雪埋まりにしろ雪だるまにしろ、スキー通の方々から
「そういうことはやっていられないはず…」
「そんな余裕がないはず……」
と、それがいかに無謀なことであるかを教えられていたうちの奥さんだったが、いともたやすく念願を達成してしまった。
もちろん、これら大会に第2回以降はなかったけれど………。
その後、リフトに2度乗った。この日は晴れたり曇ったり雪降ったりで、料理と同じフルコースである。そんなフルコースの天気で変わる景色は楽しかったものの、そろそろ同じコースも飽きたかなァ………。
お迎えしていただく時間をお電話したあと、うちの奥さんの夢ベスト3の、いよいよ最後の作戦に入った。
第1回 缶ビールを雪に埋めて冷やして飲もう大会!!
(パフパフッ)
ロッジの自販機で買った北海道限定サッポロクラシックは最初からキンキンに冷えているんだけれど、どうしても雪にブスッとさしてから飲みたい、と駄々をこねるのである。それが夢だったのだ、と言われれば仕方がない。熱心にスキーやボードを楽しんでいる人々の傍らで、ドデンと腰を据えてビールを飲む我々であった。
あたりを見まわしても、他にそんなヤツはどこにもいなかったのはいうまでもない。
だいたい、北海道、それもベストオブベストのニセコまできて、そこでの夢が「雪埋まり」「雪だるま」「雪ビール」ってヤツがいるか?フツー……。
それにしても、スキーってもっと運動になるのかと思っていたら、とってもとっても楽チンではないか。スーパーボーゲンのオタマサは筋肉を酷使しているようだったが、貴公子はあくまでも滑らかなので、体のどこも痛くも痒くもない。誰だ?年取ったらスキーはつらいぞ、なんて言ってたヤツは………。
宿に戻ってヨロコビの温泉に入ったあと、部屋からアンヌプリのゲレンデを見やるとナイターの照明がついていた。夜まで熱心にスキーやる人もいるんだなぁ。
聞くところによると、風みどりさんには過去に10泊11日、朝から晩までスキー三昧というお客さんもいたらしい。朝、リフト運行開始時点ですでにそこに並んでいて、夜はリフトの最終便に乗って上まで行き、最後の最後まで滑っていたそうだ。それを10日間!!!!
おそるべし、ストロングスキーヤー!!夜はやっぱりお酒でしょう?