はて、このキッカイなモジャモジャ、ウミシダでしょうか、イソギンチャクでしょうか。
正体が何であれ、まず動物と思った方はさすがです。
コイツをよく見ていると、まるで枝のように何本も伸びている触手を、一本一本かわりばんこに中央にある口らしきところに運んでいることに気づきます。どうやら触手にまとわりついた何がしかを口に運んでい食べているようです。ちなみに、この触手部分をいじめると、彼はピューッと砂の中に潜り込んでしまいます。
さて、コイツの正体は?
実はナマコなんです。
ほら、クロテナマコ(クロエリナマコ)の黒手の部分を思い出してみてください。あの部分が異常発達し、それだけを外に出している状態……。つまり本体は砂の中にあります。
水の冷たい地方で食材として使われているキンコというナマコの一種の仲間です。キンコは寒冷性だそうなので、厳密には写真の種類が種としてのキンコかどうかは僕にもわかりませんが、その仲間であることはまちがいありません。
ところで、コイツの本体はどんな形をしているのでしょうか。
残念ながら掘り出してみたことはないので写真はありませんが、どうしても見てみたいという方は、お近くのペットショップ、特に海水魚専門店に行ってみましょう。いつもいるかどうかはわかりませんが、シーアップルという生き物がいることがあります。
シーアップルとは、キンコをスーパーカラフルにしたようなナマコで、東南アジア〜北オーストラリアあたりの年中暖かい海に分布しているそうです。カラフルだから外に出ているのか、外に出ているからカラフルになったのか、とにかくシーアップルは全身を晒しています。触手部分はキンコとそっくりなので、体もきっと似ているにちがいありません。参考までに。
このキンコの仲間は、そうそういつも同じ場所にいるわけではなく、潜ればいつでも会える生き物でもありません。それなのにあまりにマイナーかつマニアックなため、誰に見てもらってもあまり喜んではもらえないかわいそうなキンコ。これまでは日本の生態図鑑で目にする機会はまったくありませんでした。
最近は「ナマコガイドブック」なるものが出て、ようやく紹介されるようになったとはいえ、わざわざナマコガイドブックを買い求める一般ダイバーがはたして何人いるのでしょうか……。