ダイバーなら誰でも一つや二つは海中で「なんだろうこれ?」と思う生き物らしき不思議なものを見たことがあるだろう。
私もビギナーの頃から今に至るまで、様々な「なんだろうこれ?」生物を見てきたが、さすがに15年以上も潜っているとだんだん解決されていくものである。
その一つに、岩肌に付いている直径2センチくらいの黒灰色の光沢のある球状のものがあった。その後ほどなくそれはオオバロニアという藻の一種であることが判明した。ちなみにこの藻を黒真珠と教えられ、以後しばらくの間信じ込んでいた人もいる。
写真の生き物も「なんだろうこれ?」のひとつである。
写真でここまで大きくすればたしかに生き物ということがわかるのだが、初めて伊豆で見たとき、ゴミが漂っているとばかり思ったものだ。が、近寄ってみるとどうも動きが生き物っぽい。ピコッピコッと動きつつ海中の水の動きにあわせてユラユラしていた。
肉眼でもファインダー越しでもなかなか細部まで観察できないのでとりあえず写真を撮り、現像されたフィルムをじっくりルーペで見てみると……
ウワッ、これは目玉の大きなエビ・カニの幼生(エビカニの幼生は本来の姿になる前のプランクトン期間をヘンテコな形で過ごすものが多い)じゃないか!?
以後この生き物をピコピコ虫と名付け、いったいコイツは大人になると何になるのかな?というナゾ解きを楽しみにしていた。
その後水納島でもときおり見られるようになり、ますますナゾは深まるばかり……になるかと思いきや、なんとIOPニュースでこのピコピコ虫が紹介されていたのだ!
その名もヒメオオメアミというらしい。釣りのエサでおなじみのオキアミの仲間である。
せっかくニックネームまで付けて、ナゾの生き物だぁと鼻息荒くしていたのに、あっけなく既知の生物であることを知らされてしまった。
シュウウゥゥゥゥと音を立ててヨロコビは萎み、ああ、ピコピコ虫よ、さらばさらば、と涙に暮れた。